ブログ記事一覧

プログラミングで論理的思考力が育つ理由とは?

「プログラミング学習って何の役に立つの?」この疑問に答えるため、これまでにも、情報教育の拡充やロボットプログラミングをキーワードに解説してきました。

過去の記事はこちら→「今さら聞けない?!プログラミング教育の今とこれから

しかし、「生成AIがコードを書いてくれるのだから、プログラミングスキルはもう不要なのでは?」本当にそうでしょうか?

答えは「いいえ」です。教育の中で今もプログラミングが重視されているのには、はっきりとした理由があります。それは、プログラミング活動が、論理的に考える力の育成に効果があるためです。

ポイントは、「コンピュータを動かすつもり」で考えることです。

この記事では、プログラミングと考える力の関係について解説していきます。

目次

1.プログラミングで育つ「考える力」とは?
2.なぜ「コンピュータを動かすつもり」で考えるとよいの?
3.論理的思考を育む手段としてのプログラミング

プログラミングで育つ「考える力」とは?

プログラミング学習で身につくのは、特別な専門知識ではなく、物事を整理して考えるための基本的な力です。それは、プログラミング学習が「コードを書く技術」ではなく、「考え方そのもの」を学ぶ学習だからです。

これらの思考力は、日本ではプログラミング的思考、海外ではより広い概念としてコンピューテショナル・シンキング(Conputational Thinking)とも呼ばれています。

代表的なものとして、次のような力があります。

【1】順序立てて考える力:「何をどの順番でやるか」を整理する

【2】条件を考える力:「もし〜ならどうする?」と考える

【3】物事を抽象化して考える力:共通する部分を取り出して、シンプルに捉える

これらの力は、計画を立てたり、算数や国語の問題を解いたり、物事を説明したりといった、様々な場面で必要となります。何かを考えるための土台となるスキルと言えるでしょう。複雑な課題に直面しても、自ら考えて解決していくことができるようになります。反対に、この力がないと、「丸暗記する」「言われた通りやる」だけになってしまう恐れがあります。

なぜ「コンピュータを動かすつもり」で考えるとよいの?

プログラミングの最大の特徴は、「あいまいなままでは通用しない」こと。

はっきり伝えないと動かない:だから、自然と“わかりやすく伝える力”が身につく

〇順序や条件を丁寧に考える必要がある:だから、考えを“整理する力”が育つ

コンピュータは、人の意図を推測して動くことができません。そのため、「何を」「どの順番で」「どんな条件のときに」行うのかを、自分の中で整理し、明確にする必要があります。

このように、コンピュータを動かす前提で考える経験が、物事を筋道立てて考える力につながっていきます。経験を積むことで、しだいにプログラミング以外の場面でも論理的に考えて説明したり、問題解決できたりするようになるのです。

このように、ある場面での学びが他の場面でも活用できるようになることを学びの「転移」といいます。プログラミング教育には論理的思考力一般への一定の転移効果があることが研究で明らかになっています。

論理的思考を育む手段としてのプログラミング

論理的に考える力を育てるためには、文章を書く、算数の問題を解く、などさまざまな方法があります。プログラミングもそれらの方法のひとつです。

ただ、文章や算数と少し違うのは、プログラミングの場合、実行すると、すぐにコンピューターからのフィードバックがあるところです。これにより、たとえ先生がいなかったとしても、プログラミングをすることそのものが思考力を鍛える訓練になるのです。

そう考えると、プログラミングって効率的な学び方かも・・・と思えてきませんか?

最近だと、楽しくプログラミングを体験できる教材が充実していますので、ぜひ身近なところから触れてみてください。

<参考文献>

林 向達. 2023. 「プログラミングを視座とする思考力の育成を考える」 『学びを育む 教育の方法・技術とICT活用:教育工学と教育心理学のコラボレーション』

Wing, J. (2006). Computational thinking.

ロボットプログラミング教室「プログラボ」の体験会はこちらから

おすすめ記事

「女の子はプログラミングが苦手」は本当?

「プログラミングって、男の子が得意そう」「うちは文系に進学するからプログラミング経験は必要ない」「プログラマーになる予定がなければプログラミングは勉強しなくて大丈夫」——それって本当でしょうか?

どれも大きな誤解です。

誤解1:プログラミングは男の子の方が得意

→プログラミングスキルに男女差はほとんどなく、男の子の方が向いているという事実はありません。

誤解2:文系に進めばプログラミングは必要ない

→文系の学部でも、教育学部・経済学部・社会学部などを中心に、授業や研究活動でプログラミングが必要になる機会は多くあります。

誤解3:プログラマー以外はプログラミング経験は不要

→むしろ、いわゆる事務職のようなオフィスワーカーにこそ必要な場面が増えていっています。

この記事では、上記のようなよくある誤解をといていくとともに「では、どういう子に向いているのか?」についても解説していきます。

目次

1. 「女の子はプログラミングが苦手」は大人の思い込み

2. 文系学生もプログラミング、使います!

3. オフィスワーカーはプログラミングを学んで損なし

4. プログラミングが向いているのはどんな子?

1. 「女の子はプログラミングが苦手」は大人の思い込み

「男の子のほうがプログラミングが得意」——そんな声を聞いたことはありませんか? しかし、実際の研究では、男女間で顕著なスキルの差は確認されていません。

それでも、女の子の方が「自分には向いていないかも」「失敗したら恥ずかしい」と感じやすい傾向があるのは事実です。その背景には、理系分野に対する無意識のジェンダーステレオタイプや、大人の声かけ、体験の機会の違いがあります。

子ども自身の興味や能力よりも、周囲の環境がその芽をつぶしてしまうのはとても残念なことです。「試しにやってみたら意外とできた」「思ったより楽しいかも」——そんなポジティブな最初の一歩が、興味を広げるきっかけになります。

2. 文系学生もプログラミング、使います!

「うちの子は文系志望だから、プログラミングは必要ない」という声もありますが、実は大学の文系学部でもプログラミングが必要な専攻がたくさんあります。

たとえば教育学部や経済学部、社会学部では、アンケート調査やフィールドワークを通じて集めたデータを分析する機会がよくあります。その際に活用されるのが、RやPythonといったプログラミング言語です。これらのスキルがあることで、研究の幅や深さが広がり、説得力のある成果を出すことができます。

統計ソフトR(アール)の画面イメージ(Wikipediaより)

「文系だからプログラミングは関係ない」と考えていたばかりに、大学に入ってから予想外の課題に直面する学生も少なくありません。

また近年では、文理を問わず受講できる「データサイエンス講座」も多くの大学で開講されています。学部を超えてプログラミングやデータ活用を学ぶ場が広がっているのです。

さらに、アート系の学科では、光や音、動きを取り入れたインタラクティブ・アート作品を制作することもあります。参加者が楽しめる体験型の表現をつくるには、プログラミングを含むデジタルツールの活用が欠かせません。こうした分野でも、技術が“創造力の翼”になるのです。

鑑賞者の動作によって作品が変化するインタラクティブアートにはプログラミングが必要なこともあります

3. オフィスワーカーはプログラミングを学んで損なし

将来、プログラマーにならなくても、プログラミングスキルは大きな強みになります。

仕事をするうえで、業務を効率化したり、便利にしたりといった工夫は今や欠かせないものとなっています。最近では、専門的なコードを書かずにアプリや自動化ツールを作れる「ノーコード」や「ローコード」と呼ばれるツールの活用が広がっています。また、生成AIを活用して資料作成やデータ処理を効率化するケースも増えています。

プログラミングの文法知識がなくても使えるのがノーコード、ローコードと呼ばれるツールです

こうしたツールを使いこなすためには、コンピューターがどのように動いているのか、プログラムがどのような流れで処理を進めているのかをイメージできる力が必要になります。つまり、「コードを書くスキル」だけでなく、「プログラミング的な考え方」や「デジタルツールを使いこなす素地」が重要なのです。

さらに、エクセルの作業をVBAで効率化したり、売上データをPythonでグラフ化したりといった活用例は、日常の業務の中でも数多く見られます。

これらのスキルは、どのような業界に進んでも必ず活用できます。

4. プログラミングが向いているのはどんな子?

ここまで、プログラミングは理系・男性の世界という誤解を解きつつ、なぜプログラミングを学ぶ必要があるのかを解説してきました。

ですが、ここまではあくまで「将来の話」。今の子どもたちのことを考えるとき、プログラミングが向いているのはどういう子なのでしょうか?

それはずばり「表現したいことがある子」「何かをつくるのが好きな子」です。

たとえば、ブロックで生きものや乗り物を作ったり、人形でごっこ遊びをしたりするのが好きな子は、生きものや乗り物、物語をプログラムで動かす経験をすると、ワクワクして取り組むことができます。

また、自分の調べたことをみんなの前で発表するのが好きな子は、調べ学習や解決策にプログラミングを使うことができると、より本格的に取り組めて楽しさも倍増します。

学んでいくにつれて、

自分の考えた物語をもとにゲームをつくる

自分の好きな色や動きでアート作品をつくる

地域の課題を解決するアプリを設計する

といったこともできるようになります。

プログラミングというと、パソコンやロボットが好きな「メカニック好き」な子や、「ロジカルに考える傾向のある子」のものと思われるかもしれませんが、それもまた一つの誤解といえるでしょう。実際には、様々な表現の幅を広げるツールであり、理想の世界を表現する手段なのです。

おわりに

プログラミングは、決して「男の子だけのもの」でも、「理系に進む子だけに必要なもの」でもありません。
それは、考えたことや感じたことを形にするための、ひとつの表現の道具です。

もしお子さんが、
「みてみて!これつくったの!」と楽しそうに話していたり、絵や物語、ものづくりに夢中になっていたりすれば、それはプログラミングを楽しめるサインかもしれません。

向いているかどうかは、最初から判断する必要はありません。
大切なのは、「できる・できない」ではなく、実際に触れてみて、楽しいかどうかを感じることです。

まずは、遊びや表現の延長として、気軽に体験してみてください。
プログラミングが、新しい「好き」や「得意」を見つけるきっかけになるかもしれません。

プログラボの体験会はこちら

https://www.proglab.education/lp/

プログラボガールズプロジェクト

プログラボでは不定期で「かわいい」電子工作のワークショップを開催しています。

https://www.instagram.com/proglab_girls/

参考文献

Hu, L. (2024). Exploring Gender Differences in Computational Thinking among K-12 Students: A Meta-analysis. SAGE Journals.

小田道代ほか (2023). Gender Differences in Programming Among Primary School Students in Japan. IIAI Letters.

Allaire-Duquette, G. et al. (2022). Gender Differences in Self-efficacy for Programming. PMC.

Vrieler, V. et al. (2021). Gendered Views in CS Clubs. Taylor & Francis.

Lawlor, G. (2025). Girls and Computer Science Outreach. ACM Digital Library.

公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン「プログラミング必修化前最後の世代・文系大学生への調査から見えてきたプログラミングへのコンプレックス」

非認知能力=社会情動的スキルって? その重要性と育て方をわかりやすく解説

「子どもには幸せになってほしい」――これは、すべての大人の願いではないでしょうか。

その“幸せ”に、実は学力や成績以上に深く関わっていると言われているのが「非認知能力」です。別名、社会情動的スキル(Social-emotional skills)とも呼ばれています。

自己管理力、協調性、やり抜く力など、生きていくうえで欠かせないこれらの力は、世界の教育現場で今、最も注目されているテーマのひとつです。この記事では、非認知能力=社会情動的スキルとは何か、そしてそれが子どもたちの将来にどうつながるのかを、どうやったら育てられるのかを、国内外の資料をもとにご紹介します。

目次

1. 非認知能力ってなに?

2. なぜ今、社会情動的スキルが注目されているの?

3. 社会情動的スキルはどうやったら育つの?

4. 最後に:子どもの“幸せ”のために、今できること

1. 非認知能力ってなに?

非認知能力とは、「テストの点数では測れない力」の総称で、自己制御力や対人関係能力、感情のコントロール力などが含まれます。これに対して、認知能力は主に読み書き計算など、学力テストで測定可能な能力を指します。

世界の子どもたちの学習到達度の調査を行っているOECD(経済協力開発機構)では、非認知能力を「社会情動的スキル」と定義し、主に以下の3領域に分類しています。

[1]目標の達成に関する力(やり抜く力、責任感など)

スポーツや勉強、ものづくりなど、目標に向けて困難を乗り越えていく力です

[2]他者と協働する力(共感性・協調性など)

他の人を信頼し、信頼される関係を築くことができる力です

[3]感情をコントロールする力(自己理解、ストレス耐性など)

自分の気持ちを見つめ自分でコントロールできる力です

これらは、学業成績だけでなく、将来の仕事・人間関係・健康状態にまで大きく影響すると言われています。

2. なぜ今、社会情動的スキルが注目されているの?

生成AIをはじめとする変化の激しい社会の中で、AIには代替できない人間らしさ――感情、協調、創造力といった側面が重要視されるようになっています。

OECDの2023年調査では、社会情動的スキルが高い子どもほど「学業の成績が高く、将来のキャリア志向も明確で、心身の健康状態も良好」であることが明らかになりました。

また、同調査によれば、10歳の子どもに比べて15歳では社会情動的スキルが全体的に低下する傾向にあります。特に「楽観性」「エネルギー」「信頼感」などが顕著に落ち込むことから、思春期の前後での意図的なサポートが必要とされています。

さらに日本国内でも、文部科学省による大規模調査が実施され、「社会情動的スキルが高い児童生徒は、学級への帰属意識や生活満足度が高く、成績も良好」という結果が報告されています。

3. 社会情動的スキルはどうやったら育つの?

これらのスキルは、自然に身につくわけではありません。OECDは「意図的な学びと実践が必要」だと強調しています。

例えば、

学校・課外活動:先生が生徒の感情に寄り添う声掛けをする/協働的な学びの機会を作る/失敗から学ぶ態度を促す

家庭での関わり:子どもの話をじっくり聞く/子どもの感情に名前をつけてあげる(例:「今くやしい気持ちなんだね」)/親自身が失敗を乗り越える姿を見せる

日本の文部科学省の調査でも、「教師の働きかけ」や「学級活動・特別活動の充実度」が、社会情動的スキルの育成に大きく関係することが示されています。

特に小学生の段階で、これらのスキルを丁寧に育むことが、思春期以降の学びや生活への安定した土台となることが国内外の調査で一致しています。

最後に:子どもの“幸せ”のために、今できること

「勉強ができれば将来安心」--そう信じたくなる気持ちは、親として自然なものです。でも、これからの社会を生きる子どもたちにとって、本当に必要なのは“自分を理解し、人と関わり、しなやかに生きる力”かもしれません。

学力と同じように、非認知能力=社会情動的スキルも、子どもの未来を支える「学び」のひとつです。家庭・学校・地域が一緒になって、子どもたちの内面の成長を温かく見守っていけると良いですね。

プログラボでは、ロボットプログラミングを通じて、プログラミングスキルだけでなく、非認知能力=社会情動的スキルの育成にも力を入れています。

参考文献

文部科学省. 2022. 「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究(質問紙調査に関する調査研究)報告書」

浅部航太. 2022. 『社会情動的スキルの育成が求められる背景と育成の在り方の検討』

公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン「プログラミング必修化前最後の世代・文系大学生への調査から見えてきたプログラミングへのコンプレックス 」

OECD. 2023. Schools as hubs for social and emotional learning – Are schools and teachers ready?

OECD. 2024. Social and Emotional Skills for Better Lives: Findings from the OECD Survey on Social and Emotional Skills 2023

OECD. 2024. Nurturing Social and Emotional Learning Across the Globe: Findings from the OECD Survey on Social and Emotional Skills 2023

プログラボの試行錯誤を支える工夫

前回の記事では、プログラミングと試行錯誤の関係について解説しました。

前回の記事はこちら「プログラミングと試行錯誤の関係って?」

記事の最後で、

  • 試行錯誤できる力はとても大事!
  • その力を身につけるには、実際に試行錯誤を繰り返すことが重要

と説明しました。

子どもたちが安心して前向きに試行錯誤に取り組み、そこから学んでいくためには、先生たちの関わり方が大きなポイントになります。

どうしたら試行錯誤できる?

今回は、子どもたちが試行錯誤できる力を身につけるために、プログラボの先生たちがどのような指導や声掛けをしているのか紹介していきます。

目次

1. プログラボの子どもたちの試行錯誤

2. 試行錯誤は「情報と情報の関連づけ」

3. 問題を見つけるために”条件統制”をしよう

4. 「失敗しても大丈夫」という安心

1. プログラボの子どもたちの試行錯誤

まずは、子どもたちがプログラボでどんな風に試行錯誤しているのか、ある日の授業の様子を見ていきましょう。

小学校2~3年生を対象にしたこの授業では、モンスターのロボットに赤や青のブロックを食べさせて、色によってモンスターの反応が変わるというプログラム作りに挑戦しています。

はらぺこモンスター

ところが、連続してブロックを食べさせようとすると、口の開き具合が毎回違ってしまうのでうまくいきません。食べさせる前に、いつも同じ口の形にするにはどうしたらいいんだろう・・・?子どもたちは、先生にアドバイスをもらいながらあれこれ試してみます。

そうして、①まずは口を閉じて、②そのあと少しだけ口を開く、という順番にすると、いつも同じ口の形にできることに気付きます。

続いて、1~2年生の授業の様子も紹介します。

ここでは、コントローラーをどのように取り付ければ操作しやすいか、子ども達が何度も作り変えながら理想の形を目指しています。

よこよこ星人

プログラボでは、ロボットを作ってプログラミングしたあと、さらに自分で色々やりたいことを試すための「余白」の時間が設けられています。ロボットの改造も大歓迎!大事な学びのタイミングのひとつです。

このように、子どもたちは問題解決や創意工夫のために、日々楽しみながら試行錯誤をしています。では、子どもたちがのびのびと試行錯誤ができるように、プログラボの先生たちはどんな工夫をしているのでしょうか?

2. 試行錯誤は「情報と情報の関連づけ」

「試行錯誤しよう!」と呼びかけるだけで、誰でもすぐにチャレンジできるわけではありませんよね。やったことがないことに挑戦するのは、誰だって躊躇(ちゅうちょ)するもの。では、子どもたちが最初の一歩を踏み出すために、何ができるでしょうか?

ポイントのひとつは、試行錯誤をするための準備として「段階的なステップ」を設けることです。

たとえば、ロボットに買い物をさせよう、という授業では、バナナを買いたい子はバナナを、クッキーを買いたい子はクッキーを目的地にして、ピタっとロボットが止まれるようなプログラミングに挑戦します。

正確に移動するためには、プログラミングブロックのそれぞれのパラメータがどのような意味をもつのかを知り、それらの組み合わせによって動きがどういう風に変化するのかをイメージする必要があります。あてずっぽうに数字を入れて試すだけでは、やみくもで運任せな「あまりよくない試行錯誤」になってしまいますよね。

先生は、それぞれのパラメータが何を指しているのか、実際に動かして確かめさせたり、繰り返し子どもたちに口にさせたりします。

そうすることで、子どもたちは数値と動きの関係を論理的に考えることができるようになり、失敗を次に活かす意味のある試行錯誤につながっていきます。ある先生は、「試行錯誤とは、情報と情報を関連付けて考えること」と言います。

3. 問題を見つけるために”条件統制”をしよう!

もうひとつ、先生たちが繰り返し伝えるアドバイスとして「条件をそろえて観察しよう」というのがあります。

この授業では、センサーを使って黒い線をなぞって、ボールをつかんで容器に入れる、というプログラミングに挑戦します。黒い線からロボットが外れてしまったり、ボールを落としてしまったりと、いろいろな「うまくいかないこと」が起きます。

その原因を予想してプログラムを修正していくのですが、子どもたちはしばしばプログラムのあちこちを一気に変えてしまいます。これでは、何が問題の原因か分からないままになってしまいます。

「プログラムの一か所だけ変えて、何が変わるか見てみてみよう。ロボットのスタート位置や、アームの開き具合も、いつも同じになるようにして、比べてみよう」

先生は「どこを変えるべき」とは言いません。子どもたち自身が問題を見つけられるように、試行錯誤の方法をアドバイスします。すると、

「あ!いつも同じ場所でうまくいかなくなる。これは〇〇が原因だからだ!」

「じゃあここを直そう!」

という風に、自分で気づいて考えられるようになっていきます。

このように、あることを考えるために、その手前の部分に到達できるようサポートすることを、教育の世界では「足場かけ」と呼んでいます。また、このような「子どもが自分だけではできないけど、他の人の協力があればできるようになることの範囲」を「発達の最近接領域(さいきんせつりょういき)」と呼びます。

発達の最近接領域のイメージ

周囲の人による足場かけがあると、子どもたちは一人では到達できない場所へたどり着くことができます

学びとは、この発達の最近接領域をどんどん外に広げていくことに他ならない。そして、教育とはそのために足場(ステップ)を作る行為に他ならない、と多くの学習や教育の専門家は主張しています。

4. 失敗しても大丈夫という安心感

ロボットが思い通りの動きをしてくれないとき、子どもたちはしばしばパニックになったり、イライラして投げ出しそうになってしまうことがあります。

先に挙げたような具体的なアドバイスの他に、もうひとつ、プログラボの先生たちがとても大事にしていることがあります。それは、成果ではなく過程を尊重し、チャレンジそのものを評価することです

これは、プログラボの教室に飾ってあるスローガンです。

ここで取り上げるのは2つ目の「たくさん失敗しよう」です。

うまくいかないのは、誰だってイヤなものです。ですが、良い失敗を通じて自分が成長することを、プログラボでは子どもたちにロボットプログラミングを通じてくりかえし伝えます。

先生たちは「今のいいチャレンジだね!」「おしい!あとちょっと!」「難しいかもしれないけど、やってみよう、一緒に考えるよ」と日々声掛けをしています。

このような取り組みを通じて、子どもたちはプログラミングの技術だけではなく、ねばり強く取り組む力を身につけていくのです。

自分で試行錯誤して手に入れた学びは、子どもにとってかけがえのないものです。プログラボでは今までもこれからも、子どもたちの試行錯誤を通じた学びを支えていきます。

「プログラボ」の体験会のお申込みはこちらから

プログラミングと試行錯誤の関係って?

プログラミングを学ぶには試行錯誤(=トライアルアンドエラー)が効果的!

そんな風に聞いたことはありませんか?

ですが、専門家の中には「試行錯誤ではプログラミングは身につかない。教えてもらって正解を真似する方が大事」と主張する人もいます。

このような正反対の意見が存在する背景には、そもそも「試行錯誤」という言葉の意味を、人によって違うものとして使っているという事実があります。

この記事では、「学びにつながる良い試行錯誤とは何か?」をテーマに、プログラミング学習との関係性をわかりやすく解説していきます。

目次

1. 試行錯誤=いきあたりばったり?

2. 人間の試行錯誤はどう違う?

3. まとめ:学びにつながる試行錯誤とは

試行錯誤=いきあたりばったり?

心理学には、「試行錯誤学習」という言葉があります。これは「ランダムにいろいろ試してみて、たまたま成功すると、次からはその成功パターンを覚えて短時間でできるようになる」という学習の形です。

20世紀初頭、心理学者ソーンダイクはネコを使った有名な実験を行いました。ネコをパズルのような仕掛けの箱に入れ、脱出できたら餌がもらえるという条件を与えたところ、ネコは回数を重ねるごとに徐々に脱出が早くなるという結果が得られました。

ソーンダイクのパスルボックス(イメージ)

この試行錯誤学習は、近年ではAIの「強化学習」という分野にも応用されています。AIに何度もゲームなどの課題に挑戦させ、成功すると報酬が与えられる仕組みにすると、最初は失敗ばかりでも、徐々に効率よく成功するようになっていくのです。

試行錯誤学習のおかげで、AIは囲碁の世界チャンピオンと戦えるほどに強くなりました

ただし、このような「いきあたりばったりに見える試行錯誤」が効果的なのは、あくまで動物やコンピューターの話。

「プログラミング学習に試行錯誤が効果がなかった」と主張する研究者の指す試行錯誤をよく見てみると、実はこの「いきあたりばったりの試行錯誤」を指していることがほとんどです。

人間の試行錯誤はどう違う?

私たち人間の試行錯誤は、それとは少し違います。単に手当たり次第に試すのではなく、「こうすればうまくいくかも?」といった予測や経験、直感をもとに行動しています。

たとえば、横スクロールのゲームを初めてプレイする場合、キャラクターが最初に向いている方向にゴールがあるだろう、と自然に想像してその方向に進んでみる——そんな行動はまさに人間らしい試行錯誤です。

横スクロールゲーム

こうした予測に基づく行動は、「ヒューリスティック」と呼ばれることもありますが、要するに「直感や経験を頼りに、最も可能性の高い方法を試してみる」姿勢だと言えるでしょう。

さらに、人間は「うまくいかなかった理由」を振り返り、「次はこうしてみよう」と仮説を立てて行動を修正することができます。こうした学びのプロセスは「アブダクション(仮説的推論)」と呼ばれています。アブダクションは、帰納・演繹(えんえき)と並ぶ論理的な思考法と呼ばれ、特に、新しい事実を発見したり、これまでに実現できなかったことを実現したり、という場面でとても重要な考え方です。

まとめ:学びにつながる試行錯誤とは

では、プログラミング学習における「良い試行錯誤」とはどのようなものでしょうか?

それは、単にやみくもにコードを書いて試すのではなく、「なぜこのエラーが出たのか」「どう書き換えたら動くだろうか」と考えながら修正を繰り返すプロセスです。つまり、自分の頭で仮説を立てて、実際に試し、結果を見てまた考える——この繰り返しこそが学びを深めていく鍵なのです。

試行錯誤は、ただの手探りではありません。「考えながら試す」というプロセスを通じて、子どもたちは自分で考える力を身につけていきます。

プログラミングスキルの習得において重要なのはもちろんのこと、この“試行錯誤する力”そのものは、これからの時代に欠かせないスキルでもあります。

そして、その力を育てるには、何より「実際に試行錯誤を重ねること」が必要です。だからこそ、子どもたちが安心して失敗し、チャレンジできる「試行錯誤しやすい環境」を整えてあげることが大切なのです。

次回の記事では、ロボットプログラミング教室「プログラボ」がどのようにしてそのような環境をつくっているのか、実際の授業での子どもたちの様子をご紹介します。

どうぞお楽しみに!

参考

米盛 裕二 『アブダクション: 仮説と発見の論理』

S. Gautam. Thorndike’s Trial and Error Theory. Psychology Discussion

Merisio, C., et. al. There is No Such Thing as a “Trial and Error Strategy”.

Berland, M., et. al. Using Learning Analytics to Understand the Learning Pathways of Novice Programmers