「子どもには幸せになってほしい」――これは、すべての大人の願いではないでしょうか。

その“幸せ”に、実は学力や成績以上に深く関わっていると言われているのが「非認知能力」です。別名、社会情動的スキル(Social-emotional skills)とも呼ばれています。
自己管理力、協調性、やり抜く力など、生きていくうえで欠かせないこれらの力は、世界の教育現場で今、最も注目されているテーマのひとつです。この記事では、非認知能力=社会情動的スキルとは何か、そしてそれが子どもたちの将来にどうつながるのかを、どうやったら育てられるのかを、国内外の資料をもとにご紹介します。
目次
1. 非認知能力ってなに?
1. 非認知能力ってなに?
非認知能力とは、「テストの点数では測れない力」の総称で、自己制御力や対人関係能力、感情のコントロール力などが含まれます。これに対して、認知能力は主に読み書き計算など、学力テストで測定可能な能力を指します。
世界の子どもたちの学習到達度の調査を行っているOECD(経済協力開発機構)では、非認知能力を「社会情動的スキル」と定義し、主に以下の3領域に分類しています。
[1]目標の達成に関する力(やり抜く力、責任感など)

[2]他者と協働する力(共感性・協調性など)

[3]感情をコントロールする力(自己理解、ストレス耐性など)

これらは、学業成績だけでなく、将来の仕事・人間関係・健康状態にまで大きく影響すると言われています。
2. なぜ今、社会情動的スキルが注目されているの?
生成AIをはじめとする変化の激しい社会の中で、AIには代替できない人間らしさ――感情、協調、創造力といった側面が重要視されるようになっています。
OECDの2023年調査では、社会情動的スキルが高い子どもほど「学業の成績が高く、将来のキャリア志向も明確で、心身の健康状態も良好」であることが明らかになりました。
また、同調査によれば、10歳の子どもに比べて15歳では社会情動的スキルが全体的に低下する傾向にあります。特に「楽観性」「エネルギー」「信頼感」などが顕著に落ち込むことから、思春期の前後での意図的なサポートが必要とされています。

さらに日本国内でも、文部科学省による大規模調査が実施され、「社会情動的スキルが高い児童生徒は、学級への帰属意識や生活満足度が高く、成績も良好」という結果が報告されています。
3. 社会情動的スキルはどうやったら育つの?
これらのスキルは、自然に身につくわけではありません。OECDは「意図的な学びと実践が必要」だと強調しています。
例えば、
学校・課外活動:先生が生徒の感情に寄り添う声掛けをする/協働的な学びの機会を作る/失敗から学ぶ態度を促す
家庭での関わり:子どもの話をじっくり聞く/子どもの感情に名前をつけてあげる(例:「今くやしい気持ちなんだね」)/親自身が失敗を乗り越える姿を見せる

日本の文部科学省の調査でも、「教師の働きかけ」や「学級活動・特別活動の充実度」が、社会情動的スキルの育成に大きく関係することが示されています。
特に小学生の段階で、これらのスキルを丁寧に育むことが、思春期以降の学びや生活への安定した土台となることが国内外の調査で一致しています。
最後に:子どもの“幸せ”のために、今できること
「勉強ができれば将来安心」--そう信じたくなる気持ちは、親として自然なものです。でも、これからの社会を生きる子どもたちにとって、本当に必要なのは“自分を理解し、人と関わり、しなやかに生きる力”かもしれません。
学力と同じように、非認知能力=社会情動的スキルも、子どもの未来を支える「学び」のひとつです。家庭・学校・地域が一緒になって、子どもたちの内面の成長を温かく見守っていけると良いですね。

参考文献
文部科学省. 2022. 「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究(質問紙調査に関する調査研究)報告書」
浅部航太. 2022. 『社会情動的スキルの育成が求められる背景と育成の在り方の検討』
公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン「プログラミング必修化前最後の世代・文系大学生への調査から見えてきたプログラミングへのコンプレックス 」
OECD. 2023. Schools as hubs for social and emotional learning – Are schools and teachers ready?
OECD. 2024. Social and Emotional Skills for Better Lives: Findings from the OECD Survey on Social and Emotional Skills 2023
OECD. 2024. Nurturing Social and Emotional Learning Across the Globe: Findings from the OECD Survey on Social and Emotional Skills 2023
