今、日本にはたくさんのプログラミング教室があります。子ども向けのものだけでも、ゲームやアプリ作りができる教室、オンラインで受講できる教室などさまざまです。その中でも人気なのが「ロボットプログラミング教室」。ロボットを作り、そのロボットをプログラミングで動かしながら学ぶ教室です。
ところで、こんな疑問を持ったことはありませんか?
- なぜロボットを使うんだろう?
- 他の方法とくらべてどんな良さがあるの?
- 最初からパソコンだけで学んだ方が将来の役に立つのでは?
実は、プログラミング教育の歴史において、ロボットはそのはじまりの段階から登場しており、深いつながりがあります。そのため「ロボットプログラミングによってどのような効果が得られるのか」は、世界中で研究されてきました。
この記事では、最新の研究結果から明らかになってきたことをわかりやすく紹介します。ぜひ、お子さまの習い事選びの参考にしてみてください。
目次
メリット1 子どものやる気が持続しやすい!

プログラミングの学習は短期間ではなく、長期間取り組むのが良いとされています。ただ、プログラミングは実際にやってみると「うまくいかない」できごと、つまりエラーの連続です。試行錯誤しながらエラーを修正して、プログラミングの考え方を学んでいくのですが、特に幼稚園児や小学生だと、最初からエラーばかり続くとどんどん意欲が下がっていきます。
その点、ロボットを使った学習では、エラーが起きてもロボットが反応してくれるため、子どもたちにとって学びが楽しいものになりやすいのです。
たとえば、ロボットが目的地で止まるはずが走りすぎて部屋を飛び出しそうになったり、右に曲がるはずがその場でぐるぐる回ったり・・・。そんな予想外の動きに、子どもたちは思わず笑い出します。実際の教室でもよくある光景です。
そして、ひとしきり笑ったあと、「じゃあ、次はこうしてみよう!」と子どもたちは自分で改善策を考えはじめます。

このように、ロボットの“わかりやすい反応”があることで、自分の行動に対するフィードバックが得られやすく、試行錯誤が楽しいものになるのです。さらに、自分で組み立てたロボットに対して愛着がわくため、なんとかして思い通りに動かしたいという意欲にもつながります。
実際、多くの研究が「ロボットのようなデバイスを使うことで、講義形式の学習よりも子どもたちのモチベーションが高まり、学習が長期的に持続する傾向にある」と報告しています。
メリット2 空間認識能力や数学的思考力が育まれる

ロボット制作やロボットをプログラミングで動かすことを通じて、空間認識能力が高まることがわかっています。
これは、ロボットを組み立てたり動かしたりする際に身体を動かす機会が多いことと関係していると考えられています。たとえば、ロボットの動きを真似したり、一緒に移動したりすることで、子どもたちは自然と空間のイメージをつかむようになります。こうした身体的な関わりが、空間的な思考を育てると考えられているのです。

さらに、空間認識能力の向上は、数学的な力にも良い影響を与えると報告されています。一見関係がなさそうに見えますが、「数の概念を量としてイメージできるようになる」といった背景があるのではないかと考えられています。
この効果は、特に幼児期に顕著とされていますが、小学校高学年や中学生にも有効であることが研究からわかってきています。空間認識の力は発達の幅が広く、長期的に育まれる能力です。
メリット3 科学的思考が身につき、将来の幅広い分野に活かせる

STEM(Science・Technology・Engineering・Mathematics)の分野では、ロボットプログラミングを経験した子どもたちが進路選択の幅を広げたり、成果を上げたりする傾向が報告されています。
STEMとは、Science(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Mathematics(数学)の頭文字を取った言葉で、日本では一般的に理系と呼ばれる分野のことです。
アメリカで行われた縦断研究において、ロボットプログラミングで学ぶ人は、STEM分野で成功をおさめやすいことがわかっています。
子どもたちの進路は、プログラミングやロボットに直接関係のある分野とは限りません。

ロボットプログラミング教室では、仮説を立てる → 実行する → 結果を検証するという科学的なプロセスを日常的に繰り返します。たとえば「この条件でこう動くはず」と考えたら、それを確かめるために条件をそろえたり、何度も試して結果を観察したりといった活動が必要になります。
このような取り組みを通じて、子どもたちは自然に科学的な思考の習慣を身につけていきます。そしてこの考え方は、社会の様々な分野で活かせる基盤となるのです。
まとめ:ロボットプログラミングは、好きなことを通じて未来を育てる

今回ご紹介した効果は、必ずしもロボットプログラミングだけで得られるものではありません。しかし、ものづくりに興味を持つ子どもたちにとって、好きなことを通じて、将来に役立つ力が自然に身につくという点で、非常に魅力的な学び方であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
参考
- Fan Ouyang and Weiqi Xu. The efects of educational robotics in STEM education: a multilevel meta-analysis
- Meschede, et. al. The FIRST® Longitudinal Study: 10 Years of Follow-up Data: Final Report