WRO2019ハンガリー国際大会リポート(7)オープン3日目

WRO国際大会もついに最終日です。最終3日目の様子は千里中央の松村がお送りします。

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昨日の3回目のプレゼンでは、審査員から鋭い指摘を受けたAR+。

次のプレゼンで、もし同じ質問が来たらどう答えるのか、対策を練っていきます。どう説明するか迷ったときは「私たちはこのロボットで何を伝えたいのか?」と初心に立ち返ることが大切です。さらに、技術的な質問に、プログラムを見せながらどう答えればよいかももう一度検討します。

何度もリハーサルをして動きを1つ1つ丁寧にすることを再確認。1日目の設営、そして2日目のぶっ通しのプレゼンでかなり疲れのたまっていた2人でしたが、集中力を切らすことなく、最終プレゼンに向けて調整を重ねました。

そして朝10時、いよいよ4回目のプレゼンがスタート!

今までで1番の笑顔で、審査員の顔をしっかり見てアピールできています。そして、ハンガリーに来てからなかなかうまくいかなかった、バスから地下倉庫に荷物を降ろす動きも成功!質疑応答も、英語で話されている内容を確認しながら、ゆっくりですが答えることができました。手応えあり!本人たちも観客も納得のプレゼンでした。

審査員に笑顔で挨拶をして、最終審査が終了しました。4回すべての審査を終え、2人とも、ほっとした表情。

と思いきや・・・。

「まだ次もあると思っているから、そのつもりでいる」とのこと。実は、まだこのあと「コールバック」があるかもしれないのです。コールバックとは、審査で得点が拮抗したときなどに、審査員がもう一度ブースに戻ってきて、ロボットを見せたりもう一度プレゼンしたりするシステムです。

ところが、いつまでたっても、どのブースにも審査員がやってきません。予定の撤収時間を過ぎても、何のアナウンスもなく、ジリジリする各国の選手たち。午後3時からは表彰式・閉会式が始まるので、それまでにすべての展示を片づけなければいけません。AR+も、次々にやってくる一般のギャラリーにロボットを見せながら(持ってきた大量のレジュメはすべて配り切りました!)、関係者らしき人がそばを通るたびに、緊張した表情を見せます。

結局、今年は全チームコールバックはなし。コールバックにかかったチームは上位入賞の可能性が高いという噂もあったので、私を含む周囲の大人たちは終始ソワソワしていましたが、

「力は出し切れたから、順位は関係ない」と大人なAR+。
かっこいい・・・。

「・・・まあ、全然気にならないっていったら嘘だけど!」
そうだよね。

さあ、レギュラー、オープン、フットボール、ARC(アドバンスド・ロボティクス・チャレンジ)、すべての競技が終了し、いよいよ表彰式です!全選手が開会式と同じ会場に再び集結します。

表彰は特別賞の発表に始まり、そしてその次がオープンカテゴリーです。エレメンタリー、ジュニア、シニアの順に、8位以上のチームが呼ばれます。

いよいよオープンジュニアの発表…。

「7th place, for the open junior is…. AR+! from Japan!」

ななななんと、AR+、7位入賞です!歓喜に沸く観客席。選手2人も立ち上がって国旗を掲げます。

なお、全チームのスコアは以下からもご覧いただけます。
WRO International Final 2019: Scoring

選手が納得のいくプレゼンができた今回の成果は、2人の頑張りはもちろんのこと、多くの人に支えられて実現したものです。プログラボとして初挑戦したオープンカテゴリー。右も左もわからない私たちに、惜しげもなく多くのアドバイスをくださった追手門学院大手前中高等学校ロボットサイエンス部のみなさん、英語プレゼンの校正や発音・質疑応答指導をしてくださった有志の保護者様、 忙しいときや困ったときにいろいろな作業を手伝ってくれた選手の友人たち。長きにわたる準備期間のあいだ、そして今回のハンガリーの旅路でも選手の体調管理を気遣ってくださった選手のご家族様。また、AR+はこの間多くのメディアから取材をしていただきましたが、取材していただいた方からも数々の応援の言葉をいただきました。

そのみなさまに、7位入賞という結果をお土産として持ち帰ることができることは大変喜ばしいと思います。コーチとしては、期間中の反省点もたくさんありますが、それらも含めて、今後の子どもたちの学びの発展に寄与できるよう、この経験を糧にしたいと思います。

AR+を支えて頂きました全ての皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

WRO2019ハンガリー国際大会リポート(6)レギュラー3日目

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旅の4日目は、いよいよ競技最終日。2日目の本番走行は今年から新たに採用された「2nd Day Challenge」とよばれる競技を行います。競技コート、ロボットはそのまま(改造しても良いが実際はその必要はなし)で、3つの課題が出されます。実は8月にデンマークで開催されたWROのフレンドシップ大会というものがあり、その時にテスト運用されていたものです。

一つひとつの課題はオブジェクトの運搬をするだけですが、いつもとは異なる場所に異なる色が置かれているなどです。基本的には今あるプログラムを並べ替えて調整すればできる程度の内容です。調整時間は90分、60分、60分が連続にあり、その区切りの中で調整を行いながら、自分達の好きなタイミングで審判にコールをして、本番を行うという少し変わったルールとなっています。その場で出された課題をクリアできるプログラムを作らなければならないので、選手の本来の実力が試されます。

上位チームは5分もすればだいたいの形ができて、15分後には満点をとれる状態になっていました。実際台湾チームのコーチは内容が簡単すぎてこれでは逆転ができないとぼやいていたそうです(昨日の1、2位はタイのチーム)。WROで優勝する、そのためだけに普段から活動している彼らとは正直なところ我々は次元が異なるのです。悔しいですがそれが私達の現実です。

満点をとって少しでも順位を上げたい、それが今の目標。二人は少しずつですがプログラムを完成に近づけています。動きは確実性を重視してゆっくりですが、本当に少しずつ満点に近づいています。最後の最後の調整走行で一度満点を取れましたが、もうタイムリミットが来てしまいました。時間内に審判にコールすれば本番走行はできますが、本当にギリギリのタイミングでした。

そして本番走行。一つずつオブジェクトを処理していくロボットを緊張しながら見守ります。最後のオブジェクトを置き終わったとき、1月からスタートした今年のWROの活動、兵庫予選会に向けて、Japan決勝大会に向けて、そしてこの国際大会に向けて日々努力してきたことの全てが報われる瞬間でした。

結果は見事満点を獲得!最終順位も14位と、昨日の18位から順位を上げることができました。総合の満点は今日の満点の150点を合わせると355点ですが、初日のサプライズ分の5点が不足しているので350点でした。350点のチームの中では2番手です。8位以内の入賞の目標は達成できませんでしたが、参加99チームの中での14位ですから大健闘です。

全ての競技が終了し、残すは閉会式。各カテゴリーごとに表彰が行われます。順位が発表される瞬間は会場内のいたるところで歓声が起こり、国旗がなびきます。国によってWROに対する姿勢は様々だと思います。ナショナルチームとして国をあげて作り上げてきているところもあれば、選手個々のチカラだけにゆだねている国もあります。

しかし、自国のチームが発表されるたびに国旗を振って自国の名前を叫ぶその光景を見て、ここはまさしく国と国が競い合うオリンピックの舞台なんだとあらためて思い知らされました。まだまだ私達はその舞台にほんの少し足を踏み入れただけにすぎなかったのです。

本気で世界のトップを目指す為には、これからやるべきことがたくさんあります。私達が一歩進んでいるときに、世界のトップは二歩も三歩も進むかもしれません。しかし目標を持って日々努力することは、結果が出なかったとしても何も無駄なことではありません。この大会でも子ども達は本当に貴重な経験をたくさん積むことができました。それはきっと一生の財産になってくれると信じています。

コーチである私自身ももしかすると今後の人生を左右するかもしれない、そんな経験をすることができました。いつかあの表彰台に上れることを目指して、また子ども達と一緒に歩んでいこうと思います。

最後に、子ども達を支えてくださり、この長旅にも同行していただいたご家族の方、現地で我々を支えてくださったWRO Japanと阪急交通社のスタッフ、そしてこの大きな規模の大会を滞りなく運営してくださったハンガリーの方々には本当に感謝をしています。

明日はウィーンで観光だ!

WRO2019ハンガリー国際大会リポート(5)オープン2日目

オープン競技2日目。いよいよ今日から、審判によるプレゼンテーション審査がスタートします。なお、昨年まで2日間で計3回だった審査を、4回に変更すると発表がありました。より、公平で多様な観点からの評価を目指す、とのことです。

そして、 いよいよ競技スタート!初日の今日は、午前1回、午後2回の計3回の審査です。1回目の競技は、緊張もありましたが、持ち前の笑顔と対応力でなんとか乗り切りました!

競技と競技の間は、絶え間なくやってくる様々な国の人々にアイデアを披露!質問や提案が飛び交いますが、お菓子やバッジを交換して交流も深まります。

特に保護者の方にご用意頂いた、「AR+オリジナルチョコレート」と「ありがとうキャンディー」が大人気でした。

午後の競技に備え、食堂でランチタイム。連日の鶏肉料理も美味しく頂きます!

2回目の競技。1回目と比べると余裕が出たのか声もしっかり出て、審査員の反応も上々。

質疑応答も笑顔で対応でき、手応えありという内容でした!

そして、本日最後となる3回目の競技。2回目の成功もあり、自信を高めて臨みましたが、やはり国際大会は甘くありません。 質疑応答でやや痛いところを突かれたり、隣のブースが直前に共有電源を落とし停電するなど、苦戦しつつも、明日へつながる学びの多い内容となりました。

大観衆の中でのプレゼンテーションと慣れない英語での質疑応答で疲れもピークですが、 泣いても笑っても明日は最終日。 悔いのないよう、自分たちの力を出し切ってくれることを祈るばかりです。

WRO2019ハンガリー国際大会リポート(4)レギュラー2日目

旅の3日目は競技本番の初日です。昨日と同じように会場入りした後は、初めにサプライズルールの発表がありました。この時、5分間だけコーチが選手と接触できる時間があります。会場ではルール説明や会話などは基本的に英語で行われるため、選手に通訳をするための時間です。

初日の内容は、調整時間が60分で1回目の走行、45分で2回目の走行、45分で3回目の走行という流れで本番走行が進んでいきます。調整時間が短いこともあってかサプライズルール自体はそれほど難しい内容ではありませんでした。(黒いオブジェクトを1つ本来とは別の場所に置く)

まずは今日のコンディションに合わせて基本動作の微調整をしサプライズに挑む作戦でしたが、その基本動作が全く定まりません。1つのコースには8チームがいますので、調整走行の時間もなかなか回ってきません。全く点数をとれない状態で調整時間は過ぎていき、1回目の競技は0点で終了。どんなに調子が悪くてもここまでの状態は未経験です。

2回目の調整時間もまったく状態が変わらないまま結局本番も0点の結果に。 後で聞いたことですが、本体の調子がおかしくなり交換した後に、カラーセンサーのキャリブレーション(反射光の調整)をミスってしまっていたとのことでした。初めての国際大会での緊張、他国の選手から受けるプレッシャー、過ぎていく時間のあせり、旅の疲れ、様々な要因が重なって単純なミスを起こしてしまいます。

3回目の調整時間でようやく本来の動きを取り戻し、時間ぎりぎりでなんとか満点をとれそうなぐらいまで調整できました。ここで悪くともサプライズ抜きの満点をとっておかないと、上位入賞を目指すことは不可能になってしまいます。不安を残したままでの最後の本番走行。タイムはベストではなかったですが、なんとかサプライズ無しの満点の200点を獲得し、初日は18位の順位でフィニッシュとなりました。(サプライズ込みでは205点が満点)

ここまで来て自分達の実力を出せないまま終わることほどつらいことはありませんが、なんとか明日へとつなぐことができました。選手同士でお互いの健闘をたたえ合ったり、それを見守るコーチの間でもお互いのチームについて話をしたりする雰囲気にもなり、ようやく国際大会を心から楽しめるようになってきました。

実は3回目の競技までの合間に1時間ほど空き時間があったので、私も気分転換にオープン競技や同じ会場に出ているブースを見て回ったりしていました。国内でもレゴのイベントでよくある白いブロックのみを使って組み立てをできるブースがあったので、久しぶりにちょっと組み立てを楽しんだりしていました。

実際コーチにできることは多くありません。こちらが不安な表情ばかりを浮かべていたら彼らも不安になってしまいます。大丈夫、できるという意思を伝えられるよう、笑顔とジェスチャーで見守るだけです。そしてベストの状態でチャレンジできるように、体調面や精神面を整えてあげることです。そのためにはまずコーチ自身が彼らをサポートできる状態でなければなりません。

審判や各国とのコーチ、イベントブースでの会話は全て英語です。私も英語は得意ではありませんが、ちょっと話せる程度の会話をしてコミュニケーションをとることだけでも交流をできる楽しさがあります。今回それを改めて痛感し、もっと英語を話せるようになっておこうと思いましたし、選手も英語を話せないと、審判からの説明を正しく聞いたり、疑問に感じることはきっちり主張したり、選手同士でも会話ができればもっとWROを楽しめるはずです。

この日の夜にはフレンドシップ・ナイトが行われました。会場に設置された様々なアトラクションを行い、ランダムに割り振られてたチームにごとに得点を競います。聞くと、このような フレンドシップ・ナイト の形式は初めてではないかと言うことです。こういった場面でも初めて会う選手同士で会話が弾めばより楽しめるはずです。WRO国際大会はロボット競技だけではなく、世界に出て活動することの大切さと、今後の彼らが必ず必要になるスキルを磨くことができる貴重な場でもありました。

もし3回目の競技もミスっていたら、 フレンドシップ・ナイト は全く楽しめなかったところでした・・・

明日はいよいよ競技最終日です。

WRO2019ハンガリー国際大会リポート(3)オープン初日

WRO2019ハンガリー国際大会レポート。今回は、特にオープン競技の様子を中心に、千里中央の延命寺がお届けします。

オープンカテゴリーとは、与えられたテーマを研究し、テーマに沿ったロボットを自由に作成し、審査員の前でプレゼンテーションする競技です。今年のテーマはSmart Cities。今回千里中央から出場したAR+の2人は、その中でも「宅配業界の問題解決」に課題設定し、解決策として路線バスを活用したスマートデリバリーシステムを提案します。

国際大会に事前提出した動画

今日から3日間かけて、競技が行われます。こちらは、会場で配布された大会3日間のスケジュール表です。 初日の今日は、レギュラーが練習と調整、ロボットの解体、オープンはブースの設営と一般公開を行います。1日の最後に、開会セレモニーが予定されています。

レギュラー、オープン、フットボール、ARCの4つのカテゴリーが併行で進行。

大会発表によると、今シーズンは約73の国と地域で、約29,000チーム80,000名がWROに挑戦し、423チームが国際大会に選抜され、ハンガリーに集結したそうです。どんなすごいロボットが現れるのか、とても楽しみです。

選手村であるWRO Villageから競技が行われるOlympic Sport Parkまでは約10分かけてシャトルバスにて移動しました。一番早い便で乗り込みましたが、すでに会場前は大行列。開場までまだしばらく時間があったため、各国のチームが代わる代わる入口の前で記念撮影などをしながら待ちました。

オープン競技の初日は、まずブースの設営と一般公開です。午前中にブースを完成させて、午後から一般の来場者向けにプレゼンテーションを重ねて、本番に備える予定でしたが、日本から解体して運搬し再構築したロボットが思った以上に動かず、調整に時間を取られてしまいました。

そして夜は開会式。 初出場ということもあってか、『AR+』が日本選手団の旗手を務めさせて頂きました!

さあ、いよいよ明日からはプレゼンテーション審査が始まります。